平成27年度採択研究開発課題

ゼノ核酸アプタマー創薬基盤技術の開発

研究開発代表者:桒原 正靖

群馬大学 大学院理工学府 准教授

桒原 正靖

核酸アプタマーは、標的を特異的に認識できる一本鎖のDNAやRNAであり、抗体と同様に治療薬や診断薬等への応用が期待されている。 近年、我が国のバイオマーカー(標的)探索技術は世界最高水準となり、がんや循環器系をはじめとするさまざまな疾患関連バイオマーカーが見出されている。 また、アジア経済の発展やグローバル化に伴い、PM2.5に含まれる汚染物質や、輸入食品に含まれる農薬等の有害化合物、MERSコロナウイルス(中東呼吸器症候群)、デングウイルス(デング熱)、SARSコロナウイルス(症急性呼吸器症候群)等が、身近な脅威として迫りつつある。 故に、それら標的の特異的検出や活性阻害に対する社会ニーズが高まっており、標的に対して特異的に結合するレセプター分子を自在に創製する技術の開発が急務となっている。 抗体はレセプター分子の代表格であるが、開発や製造に高コストを要する。 一方、核酸アプタマーは、安価に創製できるだけでなく、標的に結合すると、多くの場合、その高次構造が大きく変化することが知られており、その性質を利用することによって、抗体にはない仕組みで特異的検出や活性阻害を果たし得ることが、近年の研究で実証され注目を集めている。 さらに、分子レベルでの標的が明らかになっていなくても、疾患因子である細胞や組織そのものを標的として、それらに特異的に結合するレセプター分子を作製できることも、核酸アプタマーのユニークな特長である。

本研究では、生体内安定性(ヌクレアーゼ抵抗性)に優れたゼノ核酸であるLNA(Locked Nucleic Acid)からなるゼノ核酸アプタマーの創製法を確立する。 さらに、SOMAmer®に代表される塩基修飾核酸と組み合わせることで、DNAやRNAなどの天然型核酸アプタマーで懸案となっている構造多様性の限界を克服したセレクション系を新たに開発し、ゼノ核酸アプタマー創薬の基盤技術を確立する。 実施例として、アルドステロン産生副腎腺腫やアルドステロン症疾患マーカーを標的としたアプタマー治療薬・診断薬の開発を行う。

研究実施機関の群馬大学では、大学院理工学府のグループと大学院医学系研究科のグループで研究開発を進める。 理工学府のグループは、研究開発代表者(桒原)に加え、大学院生4名(博士後期課程)らが参画し、ゼノ核酸ライブラリの作製やゼノ核酸アプタマーのセレクション、ゼノ核酸アプタマーのin vitro機能評価等を担当する。 また、医学系研究科のグループは、研究開発分担者2名(山田・中島)に加え、大学院生1名(博士後期課程)が参画し、アルドステロン産生副腎腺腫由来のプライマリカルチャーの作製やゼノ核酸アプタマーのin vivo機能評価等を担当する。 また、大阪大学大学院薬学研究科(小比賀)および医薬基盤・健康・栄養研究所(笠原)も協力研究機関として参画し、LNAヌクレオシドや改変ポリメラーゼの提供や細胞毒性評価等を実施する。 開発された技術や発明等は、産学連携・共同研究イノベーションセンターが中核となり、特許化や民間企業への技術移転等を推進し、さらに、臨床研究にむけた共同研究体制づくりを行う。 女性研究者の支援や若手研究者の養成・輩出は、本学が推進する繭玉プランやポストドクター・インターンシップ事業等、各事業によって推進・強化される。

<図1>

大学院理工学府・生命分子創製化学の研究チーム(左)と大学院医学研究科・病態制御内科学の研究チーム(右)

<図2>キャピラリー電気泳動装置を用いた核酸アプタマーのセレクション(CE-SELEX法)のようす

本法は、キャピラリー電気泳動の高い分離能により結合活性をもつ配列ともたない配列を分けることができるため、より迅速かつ簡便に核酸アプタマーの取得が可能である。また、従来のSELEX法では必須であった標的分子の固相への固定が不要であることや、サンプルの注入から分取まで全自動であることも大きな利点である。

<図3>CE-SELEX法による核酸アプタマーの創製

(A)天然型DNAライブラリおよびLNAを含む修飾DNAライブラリ(B)CE-SELEX法による各ライブラリの濃縮のようす。ライブラリ(V)を用いて、ランダム領域にLNAを含む修飾DNAアプタマーの取得に初めて成功した。